ボック(曝)寺

Chùa Bộc

~ 英雄クアンチュンを祀る ~

 
 ボック寺の立派な三関門
中央に、「天福寺」と「Chùa Bộc」の文字。
撮影:2014年9月12日


   
   三関門の扉
龍や鳳凰、亀、蓮などが描かれている。
撮影:2006年4月20日

通りの名前にもなっているボック()寺は、もとはスンフック(崇福)寺という名前で後レー()朝期の1676年に建てられました。当時ハノイはタンロンと呼ばれ、この付近はタンロンの都の南西の門でした。

1789年のドンダーの戦いで寺は破壊され、このあたりに両軍の屍が累々と横たわり、埋葬されないまま曝け出されていたことから、通称「ボック()寺」と呼ばれるようになったそうです。1792年に住職により修復再建され、正式名はティエンフック(天福)寺と改名され、仏陀だけでなく、ドンダーの戦いの戦死者の霊も祀られるようになりました。その後、現在まで寺は何度も修復されてきました。

チュアボック通りに面した立派な三関門から入ると、右側に白い手すりに囲まれた丸い池が目に入ります。その向こうにはさらに大きい池があり、「象の水浴び池」と呼ばれています。ドンダーの戦いでは象が活躍しましたが、兵士達はこの池で象に水浴びをさせたと言われています。池の前には「ヌイノンボ(仮山)」と呼ばれる岩山があり、門が立っています。

   
 象の水浴び池
撮影:2012年7月7日
 



   
 墓塔
撮影:2012年7月7日
 

三関門の左側には塀に囲まれて墓塔(歴代住職の墓)があり、正面は広場になっていて石碑や香炉があります。この寺には1676年の創建時や1792年の修復時等の古い3つの碑があります。











広場の更に左手に本堂が建っています。本堂の正面は通常閉ざされていますが、右の「方便門」から入ることができます。本堂は逆T字形の建築で、横長の9間の前堂には護法、地獄の十王、三蔵法師と孫悟空、クアンチュン像が祀られています。左右両側の地獄の十王の後ろの壁には、それぞれ「神」「仙」の字が書かれています。クアンチュン像には1846年に造られたと記されていて、死後50年を経てタイソン(西山)朝に敵対したグエン()朝のときにも、民衆がクアンチュンを慕っていたことが窺えます。本堂中央には三世仏、阿弥陀如来、布袋、誕生仏等の12体の仏像が安置されています。さらに右奥隅には准胝観音、左隅には子授け観音のティ・キン(Thị Kính)が祀られています。

   
本堂
撮影:2012年7月7日
 
 


       
護法
撮影:2012年7月7日
 


   
 須弥壇
撮影:2012年7月7日
 


   
三蔵法師  クアンチュン像 
撮影:2012年7月7日 

       
 ティ・キン観音 准胝観音 
撮影:2012年7月7日 


   
 拝堂
読経の様子
撮影:2012年7月7日
 


   
 地獄の十王
撮影:2012年7月7日
 

本堂の裏にある建物には聖母道が祀られており、その右側には達磨を祀る祖師堂があります。さらに本堂の裏手を回っていくと客殿があり、最初に「方便門」から入ってきた本堂の入り口に戻ります。

ボック寺は、ドンダーの丘とともに、18世紀末ベトナムの国土解放戦争の歴史遺跡でもあります。1964113日、文化情報省により建築芸術遺跡に指定されました。


<住所> 14 Chùa Bộc, Hà Nội
<拝観日> 毎日6:0011:3014:0017:30 
         旧暦1日・15日 6:0019:00

 

 

ベトナムの観音信仰

 ベトナムでは、本堂の他にお堂を設けるなどして観音を祀るお寺が数多くあります。これは儒教の祖先崇拝の考えから、子孫を絶やさぬよう、子供を護る観音への信仰が強いからです。

ベトナムの観音信仰は古く、6世紀に中国の王琰(おうえん)が著名な観音霊験譚集『冥祥記』を著していますが、彼が幼時に交趾(ベトナム北部)で供養した観音像の奇跡が本書執筆の動機と言われています。1049年には李の太宗(在位1028-1054)が観音を夢に見て、有名な一柱寺を建立しています。フゥォン()(ハータイ省)15世紀に建てられ、ベトナム最大の観音霊場になっています。建立縁起は、インドの興林国の王女・妙善が当地で修行して観音になったと伝えられています。この話はもともと中国の宗教劇の台本『宝巻』のひとつ『香山宝巻』の話が影響しています。


ティ・キンの物語

 ベトナム伝統劇の民衆オペラ、ハット・チェオで最もよく上演されるのがティ・キンの物語です。作者は不詳ですが、そのあらすじをご紹介します。昔、金持ちの息子と結婚して幸せに暮らしていたティ・キンはある日、姑の誤解で離縁されてしまいます。実家に戻ったティ・キンは、男と偽り出家します。男装したティ・キンを隣村のふしだらな娘ティ・マウが一目惚れし、言い寄りますがティ・キンは見向きもしません。ティ・マウはやけになり下男と関係を結び生んだ子を、ティ・キンの子供だと言っておしつけます。ティ・キンは寺を追われ、女性であると告白もせず苦労しながら子供を育てます。ティ・キンが死んで初めて女性だったことがわかり、観音として祀られるようになりました。

 このようにベトナムでは、古い時代から現在まで、観音信仰が盛んです。

 
 チェオ「ティ・キンの物語」
於:チェオ劇場(
Nhà Hát Chèo Hà Nội
撮影:2009年7月3日

 



参考資料: 『歩こうハノイ⑥ ドンダーの丘周辺を歩こう』 ハノイ歴史研究会 2007

 

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