チューノム (字喃 
Chữ Nôm)

 

ノムは“南”を意味し(中国を北とする)、チューノムとは我々ベトナムの文字という意味です。

ベトナム語には、もともと文字はなかったと言われ、長い中国支配のもと、中国語の語彙が入ってきて漢字とともに使われるようになり、日本と同様に歴代王朝の公文書や文学作品の多くは、漢文で書かれていました。しかし、ベトナムにもともとあった語彙も文字で表したいという思いが強まり、89世紀以降、漢字2字を組み合わせて、意味と発音を同時に表す新たな文字・チューノムがつくられました。

たとえば、ベトナム語で山を意味する Núi という言葉のチューノムは、山を意味する「山」と、Núi同じような音を表す「内」の二つの漢字を組み合わせて造られました。


 


漢字が正字として扱われたのに対し、チューノムは俗字扱いでしたが、クアンチュン帝の時代(18世紀末)には、中国の支配から逃れたこともあって、チューノムが公用文に使用されました。また、13世紀ごろから始まったチューノム文学も1819世紀には最盛期となりました。

ところが、このチューノムは漢字を更に複雑にした文字だったため、漢字をマスターしている知識人の間だけで使用されて一般庶民には受け入れられませんでした。17世紀にイエズス会宣教師のアレクサンドル・ドゥ・ロードがローマ字による表記法「クオック・グー」を考案し、20世紀に入ってこれが改良されて使用されるようになり、現在ではベトナム語はすべて「クオック・グー」で表記されています



参考資料: 『歩こうハノイ⑥ ドンダーの丘周辺を歩こう』 ハノイ歴史研究会 2007
        歴史研究会2011年3月講演会レジュメ「ベトナム語の話」 大西和彦




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