ダラット(Đà Lạt)のフランス建築

ダラットは、ベトナム中南部ラムドン(Lâm Đồng)省の省都で、海抜1500mのランビアン(Lâm Viên またはLang Biang)高原にあります。この高原はもともと少数民族のコーホー(Cơ Ho)族が居住する地域でした。

フランス植民地時代の1897年、インドシナ連邦の総督ポール・ドゥメルが、ヨーロッパの気候に類似した場所にフランス人のための療養地をつくることを提案。パスツール研究所のイエルサン医師が勧めたのが、かねて1893年に訪れていたダラットの地です。1902年にポール・ドゥメルがフランス本国へ帰国したことにより、計画は一時中断しましたが、第一次大戦後から盛んに開発が行われるようになります。ハノイの都市計画を任された建築家エブラールは、ダラットの開発にも従事しました。川を堰き止めてスアンフオン湖(Hồ Xuân Hương)が造られ(1919年)、1920または30年代に、スアンフオン湖を中心としてホテルや学校、駅などの大型建築が建てられていきました。多くのフランス人が保養に訪れ、インドシナ総督の別荘やベトナム最後の皇帝バオダイがかつて過ごした邸宅もあり、避暑地として大きな役割を果たしました。

今も街のあちらこちらには瀟洒なフランス建築が残され、北側にはランビアン山がそびえ、川や森などの自然に富んだダラットは、魅力的な観光地として多くの旅行客を集めています。また夏でも冷涼な気候を利用して、高原野菜や果物、花の栽培が盛んなことでも有名です。



 ダラットパレスホテル Khách Sạn Đà Lạt Palace
1922年オープン当初はランビアンパレスホテルと呼ばれた。
ホテルはスアンフオン湖(写真右)を見下ろす丘の上に建つ。
所在地: phố Trần Phú, Đà Lạt    撮影:2015年1月3日
 


ダラット駅 Ga Đà Lạt
1932~38年にかけて建築。
三角屋根は、ランビアン高原の山並みがモチーフ。
所在地: 1 Quang Trung, Đà Lạt
撮影:2015年1月4日
 
 バオダイパレス / パレス3
Dinh Bảo Đại / Dinh 3
1933~38年にかけて建築。
ベトナム最後の皇帝バオダイの元別荘。
建物の前後には庭園があり、周囲は松の森に囲まれる。
所在地: 1 Triệu Việt Vương, Đà Lạt
撮影:2015年1月4日

ダラット教会 Nhà thờ Chánh Toà
1931~42年にかけて建築。
塔のてっぺんに鶏の飾りがあり、
鶏教会 (Nhà Thờ Con Gà)とも呼ばれる。
所在地: phố Trần Phú, Đà Lạt
撮影:2015年1月4日
ドメーヌ・ドゥ・マリー教会(マイアイン教会)
Nhà Thờ Domaine de Marie(Nhà Thờ Mai Anh)
1940~43年にかけて建築。
フランス北部ノルマンディー地方の建築様式。
外壁に石材が用いられている。
所在地: 1 Ngô Quyền, Đà Lạt
撮影:2015年1月4日
 


ダラット高等師範学校 Trường Cao Đẳng Sư Phạm Đà Lạt
(旧イエルサングランドリセ)
1935年に設立されたイエルサングランドリセは、フランス人と上流階級ベトナム人のための学校だった。
校舎は、カーブした建物の端に鐘塔がそびえる独特の建築(左)。
写真右もこの学校関連の建物で、屋根のデザインがダラット駅に似ている。
ダラット高等師範学校は、1976年設立。
所在地: 29 Yersin, Đà Lạt   撮影:2015年1月4日
 
 





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