ディンバン亭
Đình Đình Bảng
~ 精緻な彫刻あふれる建築 ~

 横に大変長い大亭。
大亭の前も、祭りなどに使われるために広いスペースがとられている。
撮影:2012年8月17日

 バクニン省ディンバン村にあるこのディンバン亭(亭;村の鎮守社兼集会所)は、ベトナムで最も美しい亭として知られています。ベトナムの民謡カーザオで、次のように唄われています。

“ 第一番はドンカン亭(Đình Đông Khang)、第二番はディンバン亭、
輝かしきはジェム亭(Đình Diềm)“

第一番とされたドンカン亭は現存しておらず、現在ではディンバン亭が一番の座についていると言えます。ディンには、城隍神(=村の守護神)として高山大王(山神)、水伯大王(水神)、白隷大王(地神)が祀られています。1700年に起工、1736年に完成しました。タインホアの鎮守を務めたNguyễn Thạc Lượng阮硯亮)が引退して帰郷し、建てたと伝えられています。

建物は幅20m、奥行14m、高さ8mと、正面から見ると横に大変長いのが特徴的です。屋根が非常に大きく、建物の高さの三分の二を占め、屋根の四隅がカーブして反り上がっています。屋根を支えているのは、直径5560㎝の60本のリムの木です。建物の平面の形は、拝殿である「大亭」、城隍神を祀る「後宮」と、これらを連結する部分から成り、「工」の字形をしています。


     
 屋根の四隅は、
優雅にカーブして反り返っている。
撮影:2012年8月17日
側面
撮影:2012年8月17日
 

 大亭の中央は煉瓦敷きの土間で、正面には祭壇がありその上方には「聖躬萬歳」の篆書の文字が刻まれています。「聖躬」とは皇帝を意味しています。祭壇に幾重にも施されたレリーフは見事で、天井には鳳凰が描かれています。土間の左右は約70㎝高い板張りになっていて、集会などに使われるスペースです。建物内には500以上の龍の彫刻があり、そのほか四霊(鳳凰や亀など)や四季(松竹梅など)の精緻なレリーフがふんだんに施されています。中央の土間付近には、「八馬群飛」と呼ばれる八頭の馬が浮き彫りで描かれています。建物の前庭は広々としたスペースがとられ、門の手前には、風水の考えから大きな半月形の池が配置されています。

   
 大亭の中央(土間の部分)。
正面は精緻な木彫りの祭壇。
祭壇の前には一対の鳳凰。
天井にも鳳凰が浮彫で描かれている。
撮影:2012年8月17日
 


   
 祭壇に刻まれた「聖躬萬歳」の文字
撮影:2012年8月17日
 


      
 柱に施された龍
撮影:2012年8月17日
撮影:2012年8月17日 

 
龍の顔を正面から描いた彫刻
撮影:2012年8月17日
 

   
躍動感あふれる龍
撮影:2012年8月17日
 
 


 鹿と松
撮影:2012年8月17日
麒麟
撮影:2012年8月17日
 


   
立体的な透かし彫り。
かつて施されていた漆と金箔がわずかに残る。
撮影:2012年8月17日
 
 


   
 八馬群飛(向かって左側)
草を食んだり、足をなめたり、生き生きとした馬が描かれている。
撮影:2012年8月17日
 
   
 八馬群飛(向かって右側)
撮影:2012年8月17日
 


   
 集会のスペース(大亭)。
太い柱が重厚な雰囲気を醸す。
撮影:2012年8月17日
 


   
 啓定9年(1924年)の、「高山大王」の冊封書が掲げられている。
撮影:2012年8月17日
 



 撮影:2012年8月17日 屋根の上にも龍
撮影:2012年8月17日
 

抗仏戦(19451954)末期、撤退するフランス軍は、このディンを破壊しようと、三関門を破壊し、更に拝殿の大亭の柱に鎖をまきつけ戦車で引き倒そうとしましたが、堅牢な建物は倒されることはありませんでした。この時、阻止しようとしたディンバン社の少年遊撃隊7名が戦死しています。





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所在地:バクニン省ティエソン県ディンバン社
xã Đình Bảng, huyện Tiên Sơn, tỉnh Bắc Ninh  

参考文献:
ハノイ歴史研究会第18回史跡めぐり参考資料 20051118日 大西和彦
Đình Việt Nam, Hà Văn Tấn, Nguyễn Văn Kự, Nhà Xuất Bản TP Hồ Chí Minh 1998



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