ベトナムの道教 道教は、日本人にとってあまりなじみのない宗教ですが、ハノイでは市内に数か所道観(道教の宗教施設)があるほか、仏教寺院に道教神が祀られていることがあります。ベトナム人のおよそ80%が仏教徒と言われますが、彼らの信仰や生活の中には、道教の要素が多分に取り込まれています。 <ベトナムへ渡った道教> 道教はベトナムに最も早く伝わった宗教で、2世紀頃までには道教の原型である神仙思想がベトナムへ伝わっていたとみられています。中国の道教界では、朱砂や金、シナモン、真珠や香木などが不老長寿薬の原料と考えられました。それらの宝庫であるベトナムへ、求道者たちが原料の採取にやってきました。また、中国の武将の孫恩(そんおん:?~402)と広東地方の大官であった盧循(ろじゅん:?~411)が、道教教派の天師道をベトナムの山地民族にまで広めました。さらに、天師道が継承発展した正一教(道教二大教派のうちの一つ)本山の龍虎山に近い福建からのベトナムへの長期にわたる移民によって、道教がもたらされました。北属期(中国支配時代)の9世紀頃までには、紅河デルタ西部に多くの道観が建てられました。10世紀の中国からの独立後、時代を経るにつれ、仏教や儒教との習合が進んでいきます。15世紀の後レー(黎)朝の皇帝タイントン(聖宗:在位1460~1497)は優れた儒家でしたが、同時に道教を信仰していました。 <ハノイの道観・道教神> ハノイで最も有名な道観は鎮武観です。玄天上帝を祀り、ハノイ有数の観光ポイントでもあります。ハノイにはこの鎮武観を含め、“四大道観”(鎮武観、玄天観 、同天観、帝釈観)と呼ばれる史跡があります。玄天観には玄天上帝が祀られ、同天観は、現在は道観ではなく“安泰亭”と呼ばれるディン(亭;村の集会所兼神社)になっていますが、“同天観”の題額が今も掲げられています。帝釈観は、現在は仏教寺院として“王の寺”と呼ばれますが、ベトナムで玉皇上帝と同一視される帝釈天が祀られています。そのほか、文廟近くには碧溝道館があり、ホアンキエム湖に浮かぶ玉山祠には、呂洞賓(医学の神)や文昌帝君(文学の神)などの道教神が祀られています。 鎮武観(Đền Quán Thánh) phố Quán
Thánh, Hà Nội
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