ハノイ歴史研究会
2013年 知ろうベトナム!講演会



 日時  2013年12月12日(木) 8時半~12時半(オペラハウスから片道45分)
 史跡めぐり  コーロア城
 講師   大西和彦先生
 
  ミーチャウ姫の石像
撮影:2013年12月12日
 

東南アジア最古の城址であるコーロア城は、ハノイの北東にあり、堅固だったその城塁の跡は、今も残されています。アンズオン(安陽)王の築城を助けた金亀と、アンズオン王を祀る神社、配下の武将や、悲劇のミーチャウ姫を祀る神社などを訪れ、コーロア城の築城・落城伝説を辿りました。そして、現在も残る、三重の城塁の中で最も大きい二番目の城塁跡に上がり、大西先生の解説を聞きながら、二千年以上前の歴史に思いを馳せました。やや肌寒い天気でしたが、郊外ののんびりとした雰囲気を味わいながら、ゆっくりと史跡を散策しました。



 日時  2013年11月14日(木) 8時半~1時(オペラハウスから片道1時間弱)
 史跡めぐり  ファッティック寺 
 講師  大西和彦先生

 
 阿弥陀座像
撮影:2013年11月14日
 

ハノイから小1時間の、バクニン省の名刹ファッティック寺を訪れました。寺の象徴である阿弥陀座像は今から千年前の李朝期につくられ、戦火による破壊・修復の跡はあるものの、本堂中央に神々しく安置されていました。祖師堂には、ベトナム仏教を復興させた中国僧の拙拙禅師が祀られ、また本堂の裏には、底面に龍がかたどられた池の跡があります。背後のファッティック山頂には、近年造られた大仏と仏塔がそびえ、遠くにはドゥオン川と、のどかなバクニン平野が臨めました。
 このように見所豊富なファッティック寺、大西先生からは、阿弥陀仏が禅定印を結んでいることから、密教化した阿弥陀仏であることや、また、この阿弥陀座像のように多数の龍が刻まれた台座に仏像が鎮座しているのは、インドの影響を表す興味深い像であること、また、李朝期の龍は稲妻をかたどっていて、雨乞いの象徴であったことなど、一つ一つ丁寧に解説くださり、大変有意義な史跡めぐりでした。



 日時  2013年10月17日(木) 9時半~11時45分
 講演会テーマ  ドンズー(東遊)運動
 講師  大西和彦先生
 場所  ベトナム日本文化センター (27 Quang Trung, Hà Nội)

 
 ファン・ボイ・チャウ(歴史博物館蔵)
撮影:2011年12月2日

ドンズー運動とは、19051909年にかけて、フランス植民地体制打倒、ベトナム独立回復のため、ファンボイチャウが提唱・実行した、日本へのベトナム人留学運動のこと。ファンボイチャウは、軍事援助を求めて来日しますが、日本政府からはベトナム独立には人材育成が必要であると告げられ、最盛期には200名余りの学生が日本で学びました。フランスによる日本政府への要請により、留学生は解散させられますが、短期間とはいえ、ベトナム人が日本で近代的な学識を習得したたことは、大きな日越交流であったと言えます。 



 日時  2013年9月19日(木) 9時半~11時半
   考古学者・西村昌也先生を偲んで
 講師  大西和彦先生、 岩井美佐紀先生、小松みゆきさん
 場所  ベトナム日本文化センター (27 Quang Trung, Ha Noi)


 キムラン陶磁器歴史博物館
 開館式で、笑顔の故西村昌也先生
撮影:2012年3月20日

今年69日に亡くなられた西村先生の業績を、ハノイ在住の皆様に広く知っていただけるよう、先生を偲ぶ会を開催しました。歴史研究会メンバーからは、先生の偉大な業績である銅鼓の鋳型発見と、先生が設立されたドゥオンサー古窯址博物館・キムラン陶磁器歴史博物館についてご紹介しました。長年のご友人である小松みゆきさんは西村先生の人柄を、岩井美佐紀先生は、ご自身と西村先生の研究の接点である地域研究の重要性をお話し下さいました。そして大西和彦先生は、西村先生が、研究・教育・ベトナム考古学のレベルを高めるという三つの業績を成し遂げた、そして、今後ずっと私達の心の中で、私達の進むべき道を指し示してくれるであろう、と述べられました。参加者の皆様からは、西村先生が設立された「東南アジア埋蔵文化財保護基金」へ多くの寄付を頂き、厚くお礼申し上げます。
西村先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 



 日時  2013年6月27日(木) 10時~11時半
 見学会  ベトナム仏教文化遺産展  於:国家歴史博物館 (旧革命博物館)
 講師  大西和彦先生
   
 展示の初めの部分には、寺の須弥壇上の典型的な配置を模して仏像が安置され、そして、時代を追って、仏教関係の像や写真、絵など約200点が展示されていました。
 インドから伝播した仏教は、1114世紀の李・陳朝期に最も栄え、1516世紀初めの黎朝初期に儒教が重んじられたことによりやや衰え、その後16世紀中頃~17世紀の莫朝で再び復興していきます。
 これら仏教の盛衰の歴史とともに、それぞれの時代やベトナム仏教を特徴づける展示品を中心にご案内頂きました。農業に関わる自然現象と融合した法雲仏や密教の真言(呪文)が刻まれた経柱(きょうちゅう)(
10世紀以前)、法華経信仰に基づき盛んに造られた仏塔の模型(李朝期)、竹林派(禅宗宗派)を創設した陳仁宗の著書(陳朝期)、陶製の仏具(莫朝期)、地獄の十王の絵画(阮朝期)、ベトナムの国宝とされるブロンズドラム(西山期)などについて説明頂きました。



 日時  2013年5月23日(木) 9時半~12時
 講演会テーマ  ベトナム人の一生と信仰
 講師  大西和彦先生
 場所  ベトナム日本文化センター (27 Quang Trung, Ha Noi)
 
 トートムのカード
日本人が描かれている。
 
 ベトナムでは、一生の中のイベントや年中行事で、様々な信仰を取り入れた儀式が行われています。子供に関する儀式では、病弱な新生児を神仏に売り、神または仏の養子とした後、自分が育てるという契約書を交わすといった大変興味深い習俗があります。葬式では、遺体を包む布には、仏教の梵字と道教の護符などが描かれ、更に民間信仰として、ベトナム伝統トランプであるトートム
Tổ Tômを棺に入れる習慣があります。このカードには日本人が描かれていて、死者を守ると信じられているのだそうです。年中行事としては、旧正月の行事の中では道教の習慣が多く、お盆行事には、仏教・道教・儒教・シャーマニズムが混在しています。このようにベトナムでは、それぞれの信仰の要素を組み合わせた、この国独特の習俗を作り上げているのです。


 日時  2013年4月18日(木) 9時半~12時
 講演会テーマ  ベトナム戦争をふりかえる
 講師  大西和彦先生
 場所  ベトナム日本文化センター (27 Quang Trung, Ha Noi)

1954年のフランス撤退から、ベトナム戦争勃発、1975年の戦争終結・南北統一までについて順を追って辿りました。南ベトナム政府ジェム政権の仏教弾圧により引き起こされた僧の焼身自殺、米軍の軍事介入の発端となったトンキン湾事件、ソンミ村の大量村民虐殺、石川文洋氏の写真、テト攻勢や、サイゴンの路上で処刑されるベトコンの写真など、ポイントとなる事件や象徴的な写真を紹介し、一般的には知られていない様々な面からの、大変興味深い分析を織り交ぜて、解説下さいました。 



 日時  2013年3月14日(木) 9時半~12時
 講演会テーマ  日越関係史をふりかえって ~ 日越修交40周年を記念して ~
 講師  大西和彦先生
 場所  ベトナム日本文化センター (27 Quang Trung, Ha Noi)

 8世紀、ベトナムへ漂着した遣唐使・平群広成は漢文のわかるチャム人に救助されました。織田信長などの権力者が切り取ったという沈香は、ベトナム産のものだったと言われます。167世紀は盛んに交易が行われ、ベトナムは日本から銅を、日本はベトナムから絹や砂糖を輸入しました。19世紀フランス植民地時代、独立運動の志士達は近代教育を求め来日しました(東遊(ドンズー)運動)。現在使われているベトナム語の中には、当時ベトナム人が学んだ和製漢字熟語が多々見られます。第二次大戦中日本はインドシナに進駐しましたが、戦争終結後は、残留日本兵がベトミン軍に戦術を教授するなど協力し、抗仏戦勝利に貢献しました。このように、1973年に国交樹立する遥か昔から、日本とベトナムの間には、物、人、技術など様々な面で交流がありました。そしてその交流を支えたのはやはり言語による意志疎通で、関係を深めるには、互いの言語の理解が重要な要素であると述べられました。



 日時  2013年1月17日(木) 9時半~12時
 講演会テーマ  ベトナムのテト
 講師  大西和彦先生
 場所  ベトナム日本文化センター (27 Quang Trung, Ha Noi)
    
 三柱の竈神の紙製の冠・靴

 テトの行事は、旧暦1223日に”かまど神を天に送る”ことから始まります。現在は三柱(男神二人と女神一人)の神様とされていますが、元々中国から伝えられたのは一柱(男神一人)で、17世紀、ベトナムにおける商業活動での女性の活躍を反映して、女神が加わったとみられるそうです。また最近復活の兆しがみえるCây nêuと呼ばれる古い風習があります。竹竿やサトウキビの細長い枝に魔除けの赤い布を掲げる習慣です。その他、年神の送迎や星祭など様々な習慣について詳しく解説頂きました。





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