ハノイ国家大学講堂
Giảng Đường Đại Học Quốc Gia Hà Nội
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撮影:2013年5月29日 |
1904年、仏領インドシナの首都であるハノイにインドシナ大学が設置されました。フランス植民地時代にはいると、ベトナムの教育システムは徐々にフランス式に置き換えられ、1919年には約800年続いた官僚登用試験である科挙制度が廃止されました。高等教育はフランス語で行われ、ベトナム語のローマ字表記の普及にも力が注がれました。しかしその教育は人々の教育水準を高めるというより、植民地政府に協力的な人材を育てるために行われました。 仏領インドシナは現在のベトナム、ラオス、カンボジアの領土を含んでいましたが、大学は唯一ここだけでした。しかし学生のほとんどはベトナム人で、一般のカンボジア人やラオス人は大学で教育を受ける機会はほとんどなく、わずかに皇太子など王宮関係者のみがこの大学で学びました。
この建物は1926年にエブラールによってインドシナ様式で建てられました。レー・タイントン通りからの外観は、道が狭く感じられるほど堂々としています。建物の骨格は西洋的ですが、壁面の装飾には八卦や卍(まんじ)などの東洋的なモチーフをもとにしたデザインが見られます。左右の入り口から構内へ入ると建物全体を眺めることができ、歴史博物館と同様、日よけのための二重ひさしや風通しを良くするための大きな窓が設けられています。
建物の中央はホールで、入り口の床にはモザイクタイルが敷かれ、インドシナ大学の頭文字IUがデザインされています。ホールの天井は回廊のあるドーム型で、シャンデリアが見られます。その天井には、二羽の鳥を中心にして周りに扇や剣などのモチーフが描かれています。左右の扉には、医学のシンボルであるエスクレピオスの杖(双頭の蛇が巻きついた杖)と、巻物と筆の装飾が施されています。
この玄関ホールの左右にそれぞれ講堂があります。
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ホールの天井
中心に二羽の鳥、周囲には扇や剣、楽器、魚など十二のモチーフが描かれている。
ドーム天井の周囲は回廊のようになっている。
撮影:2013年7月31日 |
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二つの講堂の扉にデザインされた、エスクレピオスの杖(左)と、
”南学”と記された巻物と筆(右)
撮影:2002年12月10日 |
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Indochina Universityの頭文字IUを
取り入れたデザインがあちらこちらに。
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階上には”動物博物館”がある。 |
撮影:2013年7月31日 |
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中庭側から見た講堂
日よけのための二重庇が見られる。
撮影:2003年2月8日 |
<住所> 19 Lê Thánh Tông, Hà Nội
参考資料: 『歩こうハノイ④フランス租界地を歩こう』ハノイ歴史研究会 2004
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