オペラハウス側面 

国家銀行(旧インドシナ銀行)
Ngân Hàng Nhà Nước

 
撮影:2012年8月2日 

ホアンキエム湖を背にリータイトー公園の正面に見える建物が旧インドシナ銀行です。
 建築家ジョルジュ・トローブ(George Trove)の設計で、1930年に建てられました。外観は伝統にとらわれないモダニズム様式ですが、内装には幾何学形態を強調したアール・デコ様式の装飾が各所に施され、八角窓にはベトナム伝統建築の装飾も用いられています。ハノイに近代建築の波が押し寄せた事を告げる、過渡期の様相を呈した建物です。


 また、旧インドシナ銀行は、リータイトー公園の突き当たりにあるというだけでなく、ここからホアンキエム湖に向かって放射線状に道路が整備されており、この位置は都市景観上重要な意味を持っています。
 1875年にコーチシナ植民地(ベトナム南部)の発券銀行として創設されたインドシナ銀行は、フランスの領土拡大とともに、サイゴンからハイフォン、ハノイとその拠点を移し、1930年から1954年まで、ここを拠点としました。1920年以降、インドシナ銀行が発行するピアストル紙幣は、フランス領インドシナ全域で流通していました。また、1929年の世界恐慌の後、負債を背負ったインドシナの諸企業や大地主を救済する中で、インドシナ銀行は一大持ち株トラストへと成長していきましたが、この建物の完成はちょうどその時期と重なります。
 インドシナ銀行が撤退した後はベトコム銀行がここで営業。その後1999年にベトコム銀行が移転、現在ここはベトナム国家銀行です。
 インドシナ銀行当時は、地下に公文書庫と事務所、1階に銀行、2階に従業員の宿舎があったそうです。ベトコム銀行が営業していた頃は自由に内部を見学できましたが、ベトナム国家銀行は、市場に流通する紙幣の管理、債券の発行など、日本でいえば日銀のような役割を果たしており、この建物の地下には現金が保管されているそうで、今は残念ながら建物の内部に入ることはできません。
 現在見学が可能なのは、入り口のステンドグラスとドーム型の天井だけですが、数段の階段を上がって入り口から中を覗くと、タイル張りの床には今も、BとIを組み合わせたインドシナ銀行のロゴが残っていて、当時がしのばれます。銀行カウンターが取り除かれ、広々としたロビーはレセプションホールとして利用されており、年頭には2階正面の総裁室に銀行総裁が立ち、ロビーに並んだ職員を前に訓示を垂れるそうです。


 それぞれ異なるデザインの、ベトナム風の八角窓が設けられている。
撮影:2007年10月13日
 


 
 左右に設けられたスロープを上がって、中央の入り口へ。
撮影:2014年3月14日


       
国家銀行の入り口。
鮮やかなブルーのガラスが印象的。
中のシャンデリアが見えている。
撮影:2007年10月13日 
インドシナ銀行のロゴ、IB。
入り口の扉を入ってすぐの床にデザインされている。
撮影:2003年11月13日 




<住所>  47-49 Lý Thái Tổ, Hà Nội

参考資料: 『歩こうハノイ④フランス租界地を歩こう』ハノイ歴史研究会 2004 



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