タイー寺 

Chùa Thầy


~ 高僧・徐道行を祀る ~

 
 タイー寺の主寺院・天福寺の本堂
撮影:2008年10月29日



 
徐道行が修行した寺>
 タイー寺は、神秘的な伝説に包まれた仏僧、徐道行(トゥ・ダオ・ハイン)が修行し遷化した地として名高く、高僧の寺(マスターパゴダ)とも呼ばれます。


<創建>
ハノイ市の南西約25kmに位置する、ハータイ省クオックオアイ県にあるサイ山周辺の天福寺、貝庵寺、頂山寺などの寺院群の総称です。標高105mのサイ山周辺は五千年以上前から人々が住みつき、多くの文化遺跡や初期仏教の伝播の痕跡が見られます。

1570年に記された「貝庵寺碑」によれば、貝庵寺の沿革はベトナムの初期独立王朝丁朝(968-980)にまでさかのぼり、きわめて古い時代から地域の信仰の中心であったことがうかがえます。李朝期(1010-1225)に徐道行(?1116?)が修行し、李朝五代皇帝神宗(在位11281138)に生まれ変ったと信じられ、それ以来各王朝の一層の崇敬を集め修築と規模の拡大が繰り返され、現在に至っています。    
 

<天福寺>

主寺院の天福寺は、李仁宗(在位10721127)の時代に建てられました。本殿は三つの堂屋が平行した三」字形で、その回りを祖師堂、回廊が囲んでいます。


前方は拝殿(下寺)で、壁には地獄のレリーフや、白馬、馨があります。中央は仏殿・中殿(中寺)で、真中にひな壇式に、三世仏(過去仏、現在仏、未来仏)、釈迦誕生仏、苦行仏(雪山像)などが配置されています。まず度肝をぬかれるのが、両側にある高さ4メートルの護法の坐像と、八大金剛の立像です。ハノイ市内の社寺では見られない迫力で、観る者を圧倒します。

        
 護法(中寺、祭壇に向かって左側) 護法(中寺、祭壇に向かって右側) 
撮影:2006年9月27日 


   
 中央の須弥壇(中寺)
撮影:2006年9月27日
 



八大金剛像(中寺)
撮影:2006年9月27日
地獄のレリーフ。牛頭が見える。(下寺)
撮影:2004年5月1日
 


 後方は上殿(上寺)です。中央に金色の冠をかぶり、黄色の衣をまとった徐道行の座像が蓮の台座にあり、その後ろには 蓮の花、龍、とりわけチャム彫刻の深い影響を示すガルーダを刻んだ石の方形の台座(陳朝期12251413)があります。さらに奥に仏像が配置されています。仏像を背にして左側には、黄色の衣で覆われた玉座があり、普段は前に飾られた写真でしか見られない徐道行の白檀の像が奥の厨子に安置されています。この像は水上人形劇の人形のように関節が曲がるように作られています。右側には徐道行の生まれ変わりと信じられている神宗の像と、その前には二体の随身の像があります。


   
 上寺の仏像
撮影:2006年9月27日


        
 徐道行
撮影:2006年7月27日
黄色い布の奥に
徐道行の白檀の像が安置されている厨子がある。
手前には写真が置かれている。
撮影:2002年12月6日
 



 
 ガルーダが刻まれた台座
撮影:2007年4月21日

本殿の背後の建物は鐘楼と祖師堂で、達磨、徐道行、高僧、聖母道の聖母などの像があり、両側の回廊には18体の阿羅漢が祀られています。

 
 聖母道の祭壇(祖師堂)
撮影:2004年5月1日

<龍の池>

寺の前には龍の池が広がり、池の中に設けられた水亭では、旧暦35,6,7,8日の祭りのときに水上人形劇が催されます。伝説では、徐道行が民衆の娯楽のために水上人形劇を創設したと言われています。池の左右には、三府殿のある日天橋とサイ山の登山口に通じる月天橋という屋根のある橋がかかっており、水亭とともに寺に何とも言えない趣を与えています。

 
 祭りの水上人形劇
撮影:2007年4月21日



 
 賑やかな祭りの日 (本堂前)
撮影:2007年4月21日
日天橋(左奥)
撮影:2006年7月27日
 

 

<サイ山>

    
 サイ山からの眺望
サイ山の洞窟 ”申光洞” 
撮影:2006年7月27日 

月天橋を渡ると、サイ山に登る入口があります。10分ほど険しい自然石の階段をのぼると、頂山寺に着きます。そこには、徐道行が神宗に生まれ変わるため遷化したと言われる聖化洞や、こぶりですが仏像や聖母を祀ったいくつかの美しいお堂が、岩山の地形そのままに肩を寄せ合うように建っています。さらに険しい山道を頂上まで登ると、視界が開けこの地方独特の石灰岩と緑の木々で覆われた奇峰群と水田が広がる景観が望めます。連なる丘陵には多くの洞窟があり、そこでホーチミンが抗仏戦争中、共産党の集会を開き、サイ山の寺々を隠れ家にしたと言われています。

このように、タイー寺はベトナムの貴重な歴史と革命の遺産であり、有名な景勝の地でもあります。ハノイから西に延びるタンロン大路(Đại Lộ Thăng Long)を車で30分程行くと、右手に「Chua Thay」と書いた標識があり、そこを右に曲がり道なりに進むと到着します。

 

参考資料: 第13回ハノイ歴史研究会史跡めぐり資料 大西和彦



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