オペラハウス側面 

オペラハウス
Nhà Hát Lớn

 
八月革命広場を前に堂々と立つ。
ヤシの木が南国らしい。
撮影:2012年8月4日
 


オペラハウスでは、現在ベトナム国立交響楽団を初め、内外の演奏家が頻繁にコンサートを行っています。

<歴史>

 その歴史は、仏領時代に遡ります。1873年、フランスはホン河から上陸し、ハノイを占領、植民地化しました。現在オペラハウスがある辺りからホン河寄りが、最初に接収した租界地でした。そしてフランス風の建物を次々と築きますが、パリのオペラ座を模したこの建物は、その中で最も荘厳な建物となりました。1911年に10年の歳月をかけて植民地政府によって建てられましたが、ここはもともと湿地であったため、大変な基礎工事を要しました。6本の通りが放射状にのびる中心広場に建てられていますが、このような街づくりは、フランスの特徴であるようです。チャンティエン通りは植民地時代、租界地とハノイ城を結ぶ重要な通りで、商業や娯楽の中心街でした。オペラや室内楽、劇が行われましたが、訪れることが出来たのは上流階級のフランス人と、わずかなベトナム人のみでした。今日でも十分に優雅で贅沢な雰囲気を醸しているこのオペラハウスは、当時は人々にどのように映ったのでしょうか。

オペラハウスは、重要な歴史の証人でもあります。正面の広場は“月革命広場(Quảng Trường Cách Mạng Tháng Tám)”と呼ばれます。月革命とは、第二次大戦終結後の19458月後半、ベトナムを統治していた日本の降伏を機に、ベトナムの独立を目指してインドシナ共産党がおこした革命のことです。819日にこの広場で蜂起を呼び掛ける集会が行われ、その後、92日の独立へとつながります。この広場に何千もの人々が集まり、ホーチミンは2階のバルコニーから演説したと言われています。建物正面に、集会が行われたことを記したプレートがあります。また、バーディン会堂が造られるまではここで国会が開かれるなど、その後の政治の舞台でもありました。1950年代以降戦争などのためオペラハウスは寂れ、90年代に入ってから修復され、1997年にハノイで行われた第七回フランス語圏サミットにあわせて、再開されたようです。

 
 1945年8月19日に集会が行われたことを記したプレート
撮影:2003年2月15日


<建物外観>

さて、ホアンキエム湖の方からチャンティエン通りを歩くと、通りの先にオペラハウスが見えてきます。白と黄色に彩られた正面は、イオニア式(渦巻き装飾の柱頭)とドーリア式(中央部分が膨らんでいる)を採用した柱が、荘重さと優美さを与えています。軒下の壁には可憐な花模様の装飾が、また上には小窓のあるドーム屋根が見られます。側面に回ると、荷物の搬入や馬車寄せとして使われた入口があり、当時の様子が偲ばれます。そして屋根の上には、翼のある獅子像が見えてきます。正面だけでなく側面も見ると、建物の奥ゆきの深さ、美しさがより感じられます。


 
 オペラハウス正面
撮影:2003年3月31日


   
イオニア式とドーリア式を折衷した柱
撮影:2011年1月17日
 
馬車寄せとして使われた入り口
撮影:2011年1月17日
 


     
 オペラハウス側面
撮影:2011年1月17日
翼のある獅子像
(フランスのノートルダム大聖堂などで見られるガーゴイルに類似するものか。)
撮影:2011年7月25日
 


<内部>

中に入ると、ロビーの中央階段には深紅の絨毯が敷かれ、床の大理石とのコントラストが印象的です。コンサートホールにはシャンデリアが下がり、天井はさわやかな水色を基調としています。また、舞台の上部中央にあるのはガリア人(フランス人の祖先)の頭部像です。座席数は、現在約600あります。

 
ロビーの大理石の階段。
途中の踊り場で左右に分かれ、2階へ上がる。
撮影:2013年12月5日
 


 

 ステージ
ステージ上方には、フランス人の祖先といわれる
ガリア人の頭部像、落成年である”1911”が刻まれている。
撮影:2012年8月24日


   
 
客席は、ヨーロッパの伝統的な劇場スタイルである馬蹄形。
3階まであり、1階と2階の側面はにボックス席がある。
撮影:2013年8月3日
 


 2階には、部屋の四方に鏡を配したきらびやかな鏡の間があります。ここが最も華美に飾られた部屋で、賓客をもてなす際使われたりします。そこからバルコニーに出ると、チャンティエン通りとその周辺が一望でき、普段と違う風景にしばし足が止まることでしょう。鏡の間の両脇の部屋には、マントルピースが設えてあります。これはもともと大理石で造られましたが、現在は別の材質で復元されています。

 
 鏡の間
撮影:2011年2月19日


 ”寿”の字をデザインした、
ベトナムの意匠も見られる。(2階床)
撮影:2013年12月5日
 鏡の間にも、ガリア人がモザイク画で描かれている。
撮影:2011年2月19日


植民地時代は多くのベトナムにとって厳しい時代でしたが、フランス文化はベトナム文化の一部となり、オペラハウスは、その一つの大きな遺産です。コンサートを聴きに行く時以外は中に入ることはできませんが、是非、音楽と共に建物も鑑賞し、歴史にも想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 
 オペラハウス2階バルコニーから眺めた八月革命広場
撮影:2014年1月16日



<住所> 1 Tràng Tiền, Hà Nội


参考資料: 『歩こうハノイ④ フランス租界地を歩こう』 ハノイ歴史研究会 2004 
        VIGNETTES OF FRENCH CULTURE IN HANOI
  Friends of Vietnam Heritage, The Gioi 2008





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